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犬の椎間板ヘルニアにおける脊髄再生医療

犬の胸腰椎における椎間板ヘルニアは、神経学的に5段階に分類される(Small Animal Spinal Diagnosis and Surgery 2ed ed 2005)。

なかでも既存の適切な治療を行なっても歩行回復が33~76%(Butterworth 1991、Anderson 1991、Scott 1999、Olby 2003、Laitinen 2005、Tamura 2009)である神経学的グレード5が臨床の現場で獣医師を悩ませている。

犬の椎間板ヘルニアは、神経の通り道である脊柱管内に突出逸脱した椎間板物質が一見主役のように思われがちであるが、神経学的グレード4および5は、明らかに主役は脊髄損傷である。

神経学的グレード4においては、適切な外科的治療をすることにより、かなりの高い確率で歩行回復が期待できる。(93% Scott 1993、92% Yovich 1993、100% Bitetto 1986、100% Black 1988、100% Mckee 1988、100% McCartney 1997、100% Tamura 2009)グレード4では、脊髄損傷が歩行回復可能な程度であると思われる。

犬の椎間板ヘルニアにおける脊髄損傷は、椎間板ヘルニアハンセンI型が発症したときの突出逸脱時の椎間板物質が脊髄に接触する衝撃力により、その程度の多くがこの時点で決定すると思われる。

現在の獣医学での椎間板ヘルニアグレード5におけるエビデンスにそった適切な治療方法は片側椎弓切除術などの外科的治療方法である(Small Animal Spinal Disorders Diagnosis and Surgery 2nd ed 2005)。

椎間板ヘルニアの外科的治療は突出逸脱した椎間板物質を除去して脊髄への圧迫を取り除くことを目的としたものであり、脊髄損傷の直接的な改善目的の治療ではない。

グレード5において、外科的治療で突出逸脱椎間板物質を除去して、脊髄への圧迫を取り除いて歩行回復をする程度の脊髄損傷であればよいが、グレード5の約40%(Butterworth 1991、Anderson 1991、Scott 1999、Olby 2003、Laitinen 2005、Tamura 2009)の症例においては、歩行回復が上手くいかない。これらの症例の多くが脊髄損傷の問題である。

近年、医学領域において損傷脊髄の修復、再生を目指した治療方法が鼻粘膜組織移植(Lima 2006)、胎児嗅神経被履細胞移植(Huang 2006、Dobkin 2006)、活性化マクロファージ移植(Knoller 2005)、鼻粘膜由来嗅神経被履細胞移植(Feron 2005)、骨髄細胞移植(Park 2005、Sykova 2006)などおこなわれている。これらの治療方法は人医界において動物実験、臨床試験(第I相~第Ⅱ相試験)がおこなわれている。

当医院においても、クリーンベンチ、CO2インキュベーターなどを完備した細胞培養室を設け、今秋より犬の椎間板ヘルニアグレード5の症例に対して細胞移植による脊髄再生医療をスタートしました。

飼い主様が絶対に諦めないでください。
一緒に頑張っていけたらと願っています。

犬の椎間板ヘルニアの手術はもとより、神経外科、整形外科を得意とする獣医師。MRIやCTなどの最新の医療機器を導入。神奈川県伊勢原市にある動物病院「愛甲石田動物病院」。